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玉田 太郎; 平野 優; 友寄 克亮; 栗原 和男
no journal, ,
原子力機構にはタンパク質の結晶構造解析に供することができる2つの中性子源が存在する。1つは研究用原子炉JRR-3で、我々のグループは2台の中性子回折計(BIX-3/4)を設置・管理しているが、東日本大震災以降、稼働停止状態が続いている。もう1つは大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設MLFで、茨城県が設置した生命物質構造解析装置(iBIX)が運用中である。上記の現状を踏まえ、最近我々はiBIXを利用した中性子回折実験を積極的に展開している。この2年間に、4つのタンパク質の中性子回折データを収集したが、うち2つのタンパク質(電子伝達タンパク質)については1.1および1.4分解能とタンパク質としては高い分解能での回折データ収集に成功している。引き続き、構造解析を実施中であるが、興味深い水素原子の挙動も多数確認している。さらに、我々はMLFに新たな生体高分子専用中性子回折装置の設置準備を進めている。この装置は、大型単位格子(目標250)結晶からの回折データ収集が可能なように設計している。この新装置が稼働することにより、これまで解析の対象となりえていなかった膜タンパク質やタンパク質複合体の中性子結晶構造解析が実現すると考えている。設置に向けて、技術的にも解決しなければならない課題が複数存在しているが、J-PARCセンターと共同で課題解決に取り組んでいる。本発表では、原子力機構における上記の取り組みについて紹介する。
平野 優; 玉田 太郎; 栗原 和男; 日下 勝弘*; 大野 拓*; 竹田 一旗*; 三木 邦夫*
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タンパク質の構造形成や酵素反応には水素結合が関与している。これまでタンパク質中の水素原子の構造は、低分子から得られた結合距離、結合角の理想値に基づいて議論されてきた。しかしながら理想値の制約を受けない水素原子の構造情報を取得することは、タンパク質の構造や機能を理解するために重要であると考えられる。高電位鉄硫黄タンパク質(HiPIP)は、紅色光合成細菌の光合成電子伝達系においてはたらく電子運搬タンパク質である。本研究では、HiPIPを用い高分解能での中性子構造解析を行った。中性子回折実験は、大強度陽子加速器施設J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)のBL03(iBIX)ビームラインにおいて行い、タンパク質としては世界最高分解能である1.1オングストローム分解能の回折データを取得することができた。構造精密化の結果、水素原子位置や結合距離など、水素結合を形成する原子の配置、パラメーターについて、従来の理想モデルから外れる例を多数観測することができた。
廣本 武史; 清水 瑠美; 安達 基泰; 柴崎 千枝; 黒木 良太
no journal, ,
T4ファージリゾチーム(T4L)は、大腸菌の細胞壁を構成するムラミルペプチドを加水分解し、溶菌を引き起こす酵素である。26番目のThr残基をHis残基に置換したT26H変異型酵素は、加水分解生成物のアノマー構造を保持する酵素に変換されるのみならず、高い糖転移活性を獲得する。一般に糖加水分解酵素では、酸性残基の2つのカルボン酸がそれぞれ酸塩基触媒として機能するが、T26H変異型酵素ではカルボン酸の代わりに同じ位置を占めるヒスチジン側鎖が反応に関与すると考えられている。そこで変異型酵素に導入したHis残基の糖転移反応における役割と隣接する酸性残基(Asp20)との関係を中性子構造解析により明らかにするため、T26H変異型T4Lの完全重水素化とその大型結晶作製を試みた。タンパク質試料は、一般的な大腸菌発現ベクター(pET-24a)を用い、完全重水素化培地で組換え大腸菌を培養後、過剰発現させることによって調製した。精製試料を用い、約0.9mmの結晶を作製した。米国オークリッジ国立研究所の研究用原子炉(HFIR)に設置されたイメージングプレート単結晶回折計(IMAGINE)を用い、室温での中性子回折実験を実施した結果、2.1分解能の回折強度データを完全性79.8%で収集することに成功した。現在、同一結晶より収集した1.7分解能のX線データを併用し、分子モデルの同時精密化を進めている。